2015年12月19日土曜日

賢き選択。米国の教育制度の分岐点

米国の教育制度に関わる超党派の法案が10日、オバマ米大統領による署名を経て法律として成立。
これはテクノロジー業界にとって朗報。
コンピューターサイエンスが算数・数学や英語(国語)と同じくらい重要な科目として位置づけられた。
法律を踏まえて、コンピューターサイエンスを科目として教える学校が全米各地で増える可能性が出てきた。

初等および中等の教育制度を扱うこの新たな「Every Student Succeeds Act(児童生徒が全員成功する教育法)」が定める包括的な科目構成の定義にコンピューターサイエンスが含まれた。
州や地域の行政当局にしてみれば、他の科目と同様に連邦予算が振り分けられる対象になった。

労働市場では技術をもったプログラマーの需要が増えている一方、供給が追いついていないのが現状だ。
コード・ドット・オーグによると、全米でコンピューター関連の求人は60万件超ある。
だが、コンピューターサイエンスの学位を持って就職した人は昨年、わずか3万8175人だった。

2015年11月14日土曜日

―― ゆにばーすっ!第2章~ゆりかご~ ――






 風が強い。
 丸い月が空に輝いている。
 星と月の光で青く染まる闇の中に、ひとつの人影が見えた。
 オレンジ色のマフラーを首に巻いて、両手を背中辺りで組んだまま、どこか遠くを見ているその人は、マサキのよく知っている顔をしていた。

 「……白畑さん」

 月明かりが、その肌を陶器のように白く輝かせている。
 冷たい夜風がスカートの白を弄んでいる。
 黒いタイツとの対比が鮮やかで、その姿はマサキの知っている彼女とは明らかに別のものだった。
 形容するなら――マサキは遙の童話に出てきた告死天使を思い出す。その原因はおそらく、あの魂の抜けてしまったような、それでいて鋭利で冷たい瞳のせいなのかもしれない。

 「来てくれたんだ」

 マサキに視線を移さぬまま、彼女は言った。
 その声はどこか重く、喜びとも失望とも取れない音をしていた。
 「白畑さん。……どうして――」
 「――わたし、言いましたよね」
 虚空に視線を投げたまま、のぞみはまるで独り言のようにマサキの言葉を言葉で遮った。過去に体験したことの無い彼女のその強引さはマサキに青天の霹靂とも思える衝撃を与え――彼の二の句は封じられた。
 「2番でもいいって。2番でいいから、マサキさんの事、好きなままでもいいですかって――でも、駄目なんです。気がついたんです。あぁ、それじゃあ、わたし、だめだなぁって」
 やっぱりだめなんです――彼女はもう一度、自分に語り聞かせるように呟く。
 「白畑さん……僕は」
 「でもやっぱり、一番でいたい。私はマサキさんの一番でいたい!一番でいたい!……よぅ……」
 その声は半ば絶叫で、半ば涙声だった。

 ――………。

 どうしたらいいのかわからない。己が無能にマサキは自己嫌悪を覚える。それは悔しく腹立たしく、そしてどうにもやるせない、筆舌に尽くしがたい思いとなって心の中に積もっていく。
 やがて耐え切れなくなり、最も愚かな選択肢にマサキは無意識で指をかける。
 「白畑さん。僕は君の事」
 「やめて!」
 その時、今までで最も大きい声を彼女は発した。思わずピクッとマサキは体を小さく震わす。

 「慰めなんていいんです。もう、これしかない。わたしにはこれしか……」

 スッ、と彼女が両腕を天に翳す。袖が重力にしたがって落ち、そこに丸い金色のブレスレットを嵌めた細い手首が月明かりの元に露出した。
 ブレスレットは三つの管が編み込まれた様に絡み合っており、環を三等分した場所にそれぞれ輝く石が嵌め込まれている。そのブレスレットを見て、マサキの心臓は跳ね上がるように鼓動を速めた。予想していた最悪の事態、恐れていた最もあって欲しくない推測が、真実であると確定した瞬間であった。

 「やっぱりわたし、姉さんを倒さなきゃ。両親はわたしを養子に出してまで運命を食い止めたかったみたいだけど、無駄になっちゃいます」
 「そんなのやめましょうよ。よくないですよ!実の姉妹なのに!」

 その言葉に、のぞみは初めて振り返りマサキの顔を見た。そして、わずかに微笑み――

 「結局、マサキさんも姉さんの味方なんですね。やっぱりそっか。あ、わたし、さっきっから、やっぱりやっぱりって。あはは、もう、なんか、壊れちゃったのかな。マサキさんのせいですよ、これ。あぁ、もう……。姉さんをやる前に……責任、とってもらいますね?」

 のぞみのブレスレット――雷光環――の三石が、月明かりに逆らう様に輝き始めた。

2015年10月31日土曜日

――ゆにばーすっ!最終章~楽園~――





「どうして僕達が戦わなきゃならないっ!」


僕は精一杯の声でそう叫んだ。
けれども彼女は止まらない。その瞳にいっぱいの涙を溜めたまま……

――ゆにばーすっ!最終章~楽園~――



そして僕達は互いを求め合うように、滅びの預言をなぞり始めた。



 月を背にした現世の皇女は、目を閉じて呟く。

 「私達は、その為に――生まれたんだよ?」

 突如、空が落ちてきたかのような衝撃がマサキを襲った。
 範囲重力を任意で入れ替える超科学の力。その元凶たるネックレス型のデバイスが、彼女の胸元で明滅していた。

 ネックレスに収められているのは数千年を生きた仙人の身を封じた石のかけら。
 調停を司る者、救済を代行する者、審判に導く者。いくつもの呼び名を持つ評価型人工知能(イニシエのヒト)[原始天尊(リチャード・グレンヴィル)]が、彼女を介して辺り一面に加圧の呪いを展開したのだ。

 マサキの視界から光が薄れ、景色が歪む。その中で、彼女の体がゆっくりと宙に浮かぶ。重力の入れ替えにより発生した反重力場が、彼女に掛かる荷重を打ち消しているのだろう。
 華奢な体が宙(そら)に舞い、月を背負う。その姿に、マサキの持つ評価型人工知能(イニシエのヒト)が反応した。

 ――討テ! アレヲ討テ!――
 
 評価型人工知能(イニシエのヒト)がしきりに叫び、彼の精神に干渉し始める。

 ――討テ! アレヲ討テ!――

 評価型人工知能(イニシエのヒト)はマサキを煽る。
 普段であれば間違いなく気絶させられているだろう評価型人工知能(イニシエのヒト)の力の暴走。磁場PS粒子干渉による強制の呪いはマサキの神経を掻き毟り、対PS粒子デバイス【真核】が埋め込まれている彼の心臓を締め付けた。
 その干渉による衝動はかつて感じたどれよりも強烈で、伝わってくる殺意はマサキの自我をもすり潰してしまいそうな程であった。
 だが、皮肉にも評価型人工知能(イニシエのヒト)自体が持つ受動防衛機能、課せられた重力に対抗する為展開された【環境防衛干渉力場】は、マサキの意識を乗っ取ろうとする呪いの力さえも妨げた。

「ふぐぅぅ……ぅううううううぁあっ!」

 ――妨げたのだが、しかし課せられた暗示の効果に影響はない。マサキの持つ評価型人工知能(イニシエのヒト)の下した反射運動的強制命令は、マサキの制御できない能力【ソロモンの枝】の噴出を阻止するには至らなかった。

 その身に宿る血伝因子(ブラッドプロトコル)【罪過の渦】の働きで、心の中に純粋な殺意が満ちる。

 枝の切っ先が彼女を捕らえた。

 ――が

 「そうだとしても、それは―――!」

 マサキはそれを制御した。


 マサキは確かに見たのだ。彼は彼女がまぶたを閉じたその刹那、月明かりに反射してきらりと光るソレを見た。
 それが何だったかは言うまでもない。その光が、マサキの覚悟を強くした。自分には彼女の涙も宿命も、すべてを拭い去る義務がある。そして今ソレができるのも、自分を除いて他はない。

 あの首にかかっている呪器を――

 やるべきことは一つ。彼女との間合いを一気に詰め、首にかかっている呪器を外す。だが走ってそれを成すのは無謀だろう。展開した加重の呪いはずっしりとマサキの全身に圧し掛かっており、走るどころか歩く事すらままならない。

 ――イチかバチか……!

 「はああああああああ!!」

 腰を落とし身体を支え、彼は丹田に力を込める。
 今のマサキには力みを伴う【理念典礼】しかできないが、先ほどから騒いでいるこの強力な腕輪――評価型人工知能(イニシエのヒト)デバイス【夜魔の輪環】――の能力を発動させるスイッチとしてなら、それで十分だった。

 ワラワニ、委ネヨ……。

 忌むべき呪器【夜魔の輪環】がその封を段階的に解かれ、自由となった憑き物が漆黒の霧となってマサキにまとわりつき始める。
 マサキの内に、どす黒く、粘着質で、甘美で鈍重な感覚が染み込んでくる。
 それは頭に、胴に、指先に、爪先にと、あっという間に隅々まで広がった。

 「くあああああああ!!」

 叫ぶ事で意識を繋ぐ。マサキに内包されている限られたPS粒子が、得体の知れない闇に掻きだされていく。

 「どうして……そんなものを持ち出してきたの? 苦しむだけなのに」

 その叫びに反応しうっすらと目をあけた彼女が、マサキを見下ろし呟く。
 マサキの動きを黙認するつもりは無いと言いたげに、彼女は加圧を展開したままもう一組の呪器(デバイス)、マサキとは違う形状の輪環を、両手で両肘辺りから両手首まで引っ張り下ろした。

 それは極自然に、極あっさりと、マサキの強引なやり方とは比べようもない程極自然に力を灯す。
 細く白い両手首の間で、細かいアーク放電現象が起きた。その呪器(デバイス)は――マサキにも見覚えがある――遙が奪われた地上最強を謳う破壊の呪器(デバイス)【雷光環】。

 右手で左手首の輪を押さえ、左手で右手首の輪を押さえ、まるで天に祈りを捧げているかのような格好で、彼女は最後の一言を告げる為の息を吸う。

 そこで、マサキは、吼えた。
 
「ちっくしょおお!なんだってそう、意地っぱりなんだよおまえらあああああ!!!」

 刹那――雷鳴が、空いっぱいに轟いた。
 純白の閃光が走った後、何もかもをも炭化させる破壊の渦が地を這った。幾つもの枝を持った青白い稲妻が、時を感ずる暇も与えずマサキそのものを飲み下す。


 ――その場に、光があふれた――






2015年10月7日水曜日

記憶を形成する人工インプラント

障害のある脳が記憶を形成することを補助する世界初の人工インプラントが開発された。
これは脳内の記憶シグナルの操作に成功した世界で初めての事例。

脳が変性すると、最近の出来事から長期記憶が形成されなくなる。
脳に障害のある一部の人が、昔の出来事は思い出せるが、最近の出来事は思い出せないのはこの為。

脳が短期記憶を長期記憶に翻訳するうえで利用する電気シグナルを模倣したコンピューターアルゴリズム。
電極などを脳に直接移植することで使用する。

記憶を「読む」方法はまだ存在しない。
しかし、この電気的シグナル伝達装置を利用すれば、脳内の損傷部位や病変部位を迂回し、その電気シグナルから記憶の内容や意味を解読することができる。

ラットや猿を用いた実験は成功しており、現在は人間による実験が進められている。
これまでてんかん症状のある9名の慢性発作を治療するために、患者の脳に電極が移植された。

実験では、コンピューターの画面上に表示された様々な形の位置を思い出すなど、患者に単純な作業を行ってもらう。そして、その際の脳内の電気シグナルを読み取る。
この結果を基に、シグナルの翻訳を90%の精度で予測できるようになるまで、電気的アルゴリズムが調整される。
神経シグナルの予測ができるということは、脳の損傷部位の機能を補助あるいは代替する装置の開発が可能になるということ。
次のステップは、翻訳されたシングルを患者の脳内に送信すること。
問題のある部位を迂回できれば、正確な長期記憶が形成される。

本研究が目指すのは、負傷した兵士の記憶回復。
しかし、記憶が蓄えられている海馬の損傷部位を迂回するなど、アルツハイマー病のような神経変性疾患の治療としても利用することができる。
尚、世界ではすでに、麻痺のある人の脳に移植した装置を使って、ロボットアームや自分自身の手足で簡単な動作を行う実験に成功している。

2015年9月30日水曜日

胃がんはほぼピロリ菌。除菌で防げる。

 近年の予防医学によって、ピロリ菌を除去すれば胃がんはほぼ防げるということが分かってきている。
 胃炎や胃潰瘍、胃MALT(マルト)リンパ腫という悪性リンパ腫の予防にも効果があるという。
2013年にピロリ菌除菌の保険適用も対象が拡大。がん検査の費用も劇的に下がりつつあり、血液検査などで体への負担も軽減されている。

 アルコールが原因と言われてきた肝臓がんも、今は主に血液感染による肝炎ウイルスが原因で、定期検診による早期発見が重要。
 予防治療の必要性は胃がんに留まらない。
 例えば歯周病は、定期的に歯医者に通っていればほぼ防げるものだが、実践できず高齢で歯がない人は多い。
 他にも、がん保険には入ってもがん検診は受けないなど、予防の意識が低い世間の行動はたくさん見受けられる。

 高齢化社会で医療費負担が大きくなるが、ピロリ菌をはじめ医学の発展によって予防できる病も増えてきた。しっかりと最新の医療知識にアンテナを張り、自分や家族のカラダを守る必要があるだろう。

 進行度などにもよると思うがCTやMRI、超音波エコーによる画像診断なども早期発見に役立つ。まだ高価だが、その価格を大幅に低減させる取り組みをしたい。

2015年5月27日水曜日

眼内に挿入して視力3.0になるOcumetics Bionic Lensレンズ発表。

視力を矯正し、3.0にまで高められる「眼内レンズ」が発表された。
数分の無痛手術で済み、その効果は生涯継続。
効果は一生継続、入院の必要もない。

瞳のレンズ部分を取り外し、代わりに生体工学レンズを移植することで、視力が一気に回復。
100歳になっても視力1.0を維持できる。
動物実験で良好な結果が得られ臨床試験も計画どおりに進めば、2017年にはカナダ国内での認可を取得できる見通し。


ウェブ画面がモニタいらずの裸眼のみで見られる時代も近いですね。

2015年4月27日月曜日

インダストリー4.0 paradigm shift

「第4次の産業革命」と呼ばれる製造業の革新。
インターネットを介して工場内外の物やサービスがつながり、今までにない価値を生み出したり、新しいビジネスモデルを構築したりする。

労働コスト。
社会保障制度が手厚い。年間労働時間が短い。
ドイツを100としたとき、日本が90、米国が80強。


第1次産業革命
 18世紀にイギリスで起き、綿織物工業の機械化
第2次産業革命
 20世紀初頭の電気による大量生産
第3次産業革命
 1980年代以降のコンピューターによる自動化を進めた。

第4次産業革命
自動化された工場が業種を越えてネットワーク化していくこと。

・センサーや自ら考えるソフトウエア
・機械や部品の情報蓄積能力
・相互コミュニケーション能力

Sensor(センサー)
Software(ソフトウエア)
Solution service(ソリューションサービス)